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2005年01月01日

東京23区・商店街歩行見聞録(仮) その016 谷底、谷底、たまに尾根

その016 谷底、谷底、たまに尾根 (2005年10月31日歩行)


 日曜日を挟み、この日は快晴。歩き始めてから二十日が経過した。体調がいいのだけはありがたい。日曜はネットの知り合いとカラオケに行った。久しぶりのカラオケだった。歌うのは大好きなのだが、近くには行ってくれる相手がいないのだ。ここのところ歩いてばかりで他人と会話する機会も乏しく、思っていた以上に声が出なかった。ちなみに僕はほぼ八十年代以前の曲しか歌えない。

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 さて、今日は当初は九品仏から等々力にかけての東急大井町線を歩く予定にしていたが、前日に地図を見て池上線のほうへ変更した。深い理由はない。なんとなくだ。

 新代田駅からバスで大田区の山王・馬込に向かった。新代田から大森というバス路線は、南北移動に便利なのでたまに利用している。東京には意外と長距離の路線バスがあり、工夫次第では散策のアプローチに使える。

 馬込銀座という交差点があり、そこから谷沿いに商店街がある。二階建て店舗の並ぶ、ごくありふれた商店街の風景だが、人通りは見られない。地図によれば、昭和初期までに低地が宅地化された地域のようで、それまでは谷戸田、つまり谷地の田んぼだったらしい。現在はそんな面影はないのだが、商店街としてもまた、賑わった面影があまり感じられない。移り変わりはあまりに早い。

 東京に限ったことではないが、だいたい昭和三十年代くらいまでに成立していた商店街はどこも賑わっていた期間がそれなりに長くあったのだろう。また、人口が劇的に増加し買い物する場所が不足してきて、農地の残る低地など土地の取りやすい場所に新たな商店街ができたことも想像できる。でも、都心のビル街の地域を除いて、東京の人口は減っていないはずだ。利用客のいない駅前が寂れる地方都市と異なり、周囲が住宅密集地で鉄道利用者も多いのだから、日常的な人の出入りだってある。なのに多くの商店街が衰退しきっている。これが東京の不思議な一面だと思う。

 やや離れているので歩いて行くかどうか迷ったが、まだ元気だったこともあり、北馬込のまっすぐな商店街を通り、そのまま長原駅前に出た。このあたりは谷ではなく、尾根、台地上にあたる。長原の商店街は先日の野方に似ていて、駅を中心にした街路に店が広がっていて、人通りと賑わいがある。路面からすぐに切符売り場がありその横が改札という、駅のコンパクトな構造も良い。僕は駅の通路をだらだら歩かされるのはあまり好きではない。あれに都会の風情を感じられれば一流の都会人なのかもしれないが……。

 いったん電車に乗り、雪が谷大塚駅へ移動する。今は大通りになっているが、中原街道に沿った比較的古くからの集落が大塚だ。「雪が谷大塚」という駅名はなんだかお洒落だが、商店はかなり昭和レトロなものが多い。駅前のスーパーすら、ちょっと黒ずんだ趣のあるビルに収まっている。駅東側の商店街の路面はすべてカラーブロックで舗装されて明るく、街灯には凝ったモニュメントが添えられていてリッチさが感じられる。田園調布のとなり町とも言えるし、駅前からは自由が丘に続く自由通りが始まる。独自のブランドを築くまでは至らないが、近隣の特徴的な街のにおいをほんの少しだけ感じる。

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 歩いて一駅北の石川台駅へ向かう。呑川岸の低地とそれに沿った急な傾斜地に拓かれた街だ。ここは距離の長い商店街ではあるのだが、普通は出入口だけにある大きな商店街アーチが交差点ごとにいくつも設置されている。商売とはあまり関係なさそうだが、これだけあるとさすがに印象的だ。訪ねる前は、名前からして住宅前の近代的な商店街かと思っていたが、やはりここも昭和のだ。盛衰はジェットコースターのようでも、商店街の建物はそうそう一気には変わっていかない。

 商店街の左右の街路に入ってみると、ちょっと高級な住宅街なのか、大きな邸宅もいくつか見られる。そして、まっすぐな道に引かれた白線には土地のアップダウンが綺麗に現れていた。ちょっと街を見ただけでは高いも低いも区別がないと思えるが、商店のある場所には土地の高低が割とハッキリと関係している。

 さらに一駅北の洗足池、その南の集落の小池の商店街を歩き、変更した予定をすべてこなして帰還した。


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posted by 志歌寿ケイト(しかすけ) at 13:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | 商店街歩行見聞録 | 更新情報をチェックする
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